高気密高断熱住宅でも24時間換気システムで寒い?対策は?
2022年に断熱等級5・6・7が新設された事や、2025年には断熱等級4が適合義務化されるなどの影響もあり最近は気密・断熱の性能が前以上に重視されるようになり高気密高断熱住宅の需要が高まっています。
高気密高断熱の家と言えば、快適で温かい家をイメージすると思いますが、一方で「24時間換気システムのせいで寒い!」という声も聞こえてきます。
では、なぜ高気密高断熱住宅なのに24時間換気システムで寒いのか?その理由について解説したり、寒い時の対策などもご紹介していきたいと思います。
そもそも24時間換気システムとは?
24時間換気システムとは2003年以降に建てられた建物には設置が義務付けられている換気システムの事で、換気回数0.5回/h以上の換気量(1時間で家の容積の半分以上の空気を入れ替えられる換気量)が求められます。
シックハウス症候群対策の為に導入された
シックハウス症候群とは、建材等から発生する化学物質などの影響で室内空気が汚染され、目の痛みやかゆみ、せき・くしゃみ・のどの痛み、鼻水、めまいや頭痛、吐き気など様々な体調不良を引き起こす事です。
このような健康被害が問題となっていましたので、住宅などに使用する建材の規制に加えて24時間換気システムの設置も義務付けられました。
換気扇とは異なる役割
キッチンやトイレ、浴室に付けられている換気扇、いわゆる「局所換気」は料理の時の煙や排泄の臭い、お風呂の湯気など一時期的に強い換気が必要とされる場所に設置されています。
24時間換気システムは「常時換気」と呼ばれ、24時間常に稼働して家の中の空気を入れ替えて室内環境の向上の為に設置されています。
ただ最近では、局所換気でも使用されていない時は常時換気の役割を果たす換気扇もあります。
24時間換気システムの種類
換気の方法は、換気機器などの機械による「機械換気」と、外風の圧力や室内外の温度差など自然の条件を利用する「自然換気」があります。
外から空気を取り入れる「給気」と、室内の空気を外に出す「排気」の換気の方法の違いで24時間換気システムは3種類あります。
◦第一種換気
◦第二種換気
◦第三種換気
◦第一種換気
給気と排気ともに機械換気で行う方法です。
どちらも機械により換気を行うので計画的に換気が出来ます。3種類の中で一番空気の流れをコントロールしやすいです。デメリットとしては導入コストとランニングコストが一番かかります。
◦第二種換気
給気は機械換気、排気は自然換気で行う方法です。
給気を機械で強制的におこなう事で室内の気圧が高めになり、部屋のドアを開けても他の部屋からの空気の流入を防ぐことができる特性を活かしてクリーンルームなど特殊な場所で利用されます。
最近の戸建てに第二種換気が採用される事はほぼありません。
◦第三種換気
給気は自然換気、排気は機械換気で行う方法です。
第一種換気に比べると圧倒的にコストが安いので、戸建て住宅では第三種換気が採用されている事が多いです。また複雑なダクトの設置も必要ないので設計も楽です。
デメリットとしては気密性の低い住宅の場合、給気口からではなく様々なすき間から空気が流入し計画的に換気が行えなくなります。その結果、換気不十分な箇所が生まれる危険性があります。
また、後述する「全熱交換器」が取り付けられないという点が第三種換気の最大のデメリットです。
高気密高断熱住宅でも24時間換気で寒い理由
高気密高断熱住宅でも24時間換気で寒い理由は、外の空気を直接取り込んでいるからです。
冬場は暖房により室内は暖められていますが外気は冷たく、その冷たい外気をそのまま給気する事が原因で高気密高断熱住宅であっても給気口の近くは特に寒く感じます。
対策として「全熱交換機」がおすすめ
全熱交換機とは、外から取り込む空気を室内の暖められた空気を利用して室温に近づける事が出来る機器の事です。
外の空気を直接取り込むのではなく、室温に近づけてから給気を行うので寒く感じる事がありません。その為、24時間換気システムで寒くなる事を懸念されている方は全熱交換器付きの換気システムを採用する事で解決出来ます。
ただし、全熱交換器は第一種換気にしか付ける事が出来ません。
ちなみに最近の戸建てに採用される第一種換気には殆ど熱交換器が付けられていますので、換気システムが第一種であれば熱交換器もほとんど付いています。
こだわる方は熱の交換効率をチェック
全熱交換器の性能は熱の交換効率で異なります。
例えば外気が0℃で室温が20℃、熱交換率90%の全熱交換機付き第一種換気システムであれば室温の90%を回収するので0℃は18℃まで上がり室内に給気されます。
これがもし熱交換率70%の全熱交換機付き第一種換気システムだったら、14℃までしか上げる事が出来ないので熱交換率90%の全熱交換機とは大きな差が生まれます。
夏も同様に熱交換が行われるので、例えば外気が35℃で室温が25℃で熱交換率90%であれば26℃で給気されます。
熱の交換効率が高い方が室温に近づけて給気を行うので、より快適な住環境を保つ事が出来ます。
第一種熱交換換気システムは高気密高断熱住宅と相性が良い
最近の高気密高断熱住宅には標準で第一種熱交換換気システムが搭載されている事も増えてきました。それは相性が良いからです。
熱交換が付いていても断熱・気密の低い家では断熱の弱い部分や家のすき間から熱が逃げてしまうので熱交換の効果を十分に発揮する事が出来ません。
高気密高断熱であれば冷暖房の効きが良く、熱交換の効果が十分に発揮され冷暖房費を抑える事にも繋がります。
高気密なので第一種換気による計画通りの換気が効率的に行われます。
効率よく換気が行われる事で結露が発生しづらくカビやダニの発生も抑えてくれます。シックハウス症候群のリスクも下がりますし、常に新鮮な空気を取り込む事で気分もリフレッシュ出来ます。
効果を最大限発揮できるので高気密高断熱住宅には第一種熱交換換気システムがおすすめです。
第一種熱交換換気システムの注意点
◦あくまで室温に近づける機能
排気する室温の熱を利用して、外気を室温に近づけているので室温と外気温に差がなければ外気温のまま室内に空気が運び込まれます。
春・秋はそれで良いですが、夏や冬は冷暖房を付けないといずれは外の気温に近づいていきます。その為、冷暖房は必要です。
◦設置位置に注意が必要
ダクトを付けて換気を行うダクト式かダクトのないダクトレスの2種類がありますが、ダクトレスの場合は排気・給気口で熱交換も行われます。
その為、もし発熱するような住宅設備・機器のすぐ近くに本体が設置されていたら排気する空気も暑くなるので夏場に暑い空気が給気されてしまう可能性があります。
ダクトレスの場合は本体設置位置を考える必要があります。
◦定期的なメンテナンスが必須
高気密高断熱住宅はスキ間風が入りにくいので換気システムの換気能力が落ちた時の影響が大きくなります。その為、フィルターの定期的なお掃除や交換、メンテナンスが必須です。
高気密高断熱でも24時間換気システムが第三種換気だと寒く感じる
24時間換気システムの換気の仕方が第三種換気だと「全熱交換機」を付ける事が出来ないので、外気の温度そのままに室内に空気を取り込む事になります。
冬だと冷たい外気をそのまま取り込む事になるので寒く感じます。夏だと暑い外気をそのまま取り込むので暑く感じます。
換気によって室温が外気温の影響を受けやすくなってしまうので冷暖房効率が下がります。その為、第一種熱交換換気システムの家と比べると冷暖房費は高くなりがちです。
ただ、第一種換気に比べて複雑なダクトが不要である事や給気が自然換気である事などからメンテナンスの手間がかかりません。そして導入コストが圧倒的に安いです。
少しでも安く見せる為に標準仕様では第三種換気を採用しているハウスメーカーが多いです。
第三種換気がダメという訳ではない
「全熱交換機」が付けられないので換気によって寒さを感じる事はありますし、換気による熱ロスが多くなるので熱交換付きの第一種換気に比べると冷暖房効率は落ちます。
ただし、暑い・寒いと感じるのは個人差もありますし、高気密高断熱住宅であれば換気による多少の熱ロスは気にならないという方もいます。
それに給気が自然換気でも高気密住宅であれば換気効率はそこまで悪くはありません。
第一種換気と第三種換気はどちらがダメでどちらが良いという訳ではなく、施主さんが優先する条件に合わせて選択するのが良いでしょう。
どちらのタイプが向いている?
◦熱交換付きの第一種換気が向いている方
・お金をかけても快適性を優先させたい方
・全館空調を取り入れたい方
・花粉症やアレルギー体質の方
(殆どの第一種換気は高性能フィルター付きなので綺麗な空気を取り込んでくれる)
・あまり窓を開けない方
(窓を開けて換気をするとフィルターを通らないので汚れた空気も入ってくる。高気密のメリットも無くなるので第一種換気を付ける意味があまりない)
◦第三種換気が向いている方
・なるべく費用を抑えたい方
・定期的なお掃除やメンテナンスが面倒に感じる方
・頻繁に窓を開けたまま生活がしたい方
・高気密高断熱住宅でない方
第三種換気の時の寒さ対策
最初に伝えると、第三種換気には熱交換器が付けられないので根本的な解決策はありません。その為、ここでは寒さを幾分か緩和できる対策をご紹介いたします。
◦給気量を調節できる換気システムを設置する
「強」「弱」など排気量の風量を調節できる機種があります。冷たい空気が入り過ぎていると感じれば「弱」にする事で寒さが緩和されます。
◦給気口専用のカバーやフィルターを付ける
調節機能が無ければ、給気の量を抑えるようなカバーやフィルターを付ける事で冷たい外気が入り込み過ぎないように調整が出来ます。
数千円程度で購入が出来て、手軽に取り付ける事が出来ます。
◦排気口の向きを調節する
やや力技だが、排気口はだいたい四方全てが空いているので下方向をテープなどでとめてしまい排気した空気が上向きに排出されるようにすれば、冷たい空気が直接当たる事がないので寒く感じる事が緩和されます。
始めから、下があまり開かずに上がパカッと開いて上方向へ排気する仕様になっている排気口もあります。
◦サーキュレーターを使う
冷たい空気を取り込んで、それが同じ箇所で留まる事で寒く感じられます。
サーキュレーターなどで暖房で暖められた室内の空気を循環させてあげておけば冷たい空気が留まる事もないのであまり寒く感じられません。
24時間換気システムは止めたらダメ?
「24時間換気システムが寒いから止めたいのですが、止めたらダメですか?」という質問を受けた事がありますが、結論からいうと止めない方が良いです。
そもそも24時間換気システムの設置が義務付けられた理由がシックハウス症候群への対策です。
当時に比べると、シックハウス症候群の原因物質のひとつである「ホルムアルデヒド」の発散濃度が多い建材は使われなくなってきていますが、家具や日用品からも化学物質が放散する可能性がある事や、近年の高気密化により自然換気が出来なくなってきているので24時間換気システムは止めない方が良いです。
第三種換気の換気口を一時期的に閉める位であれば問題ないと思いますが、そのまま忘れて閉めっぱなしになってしまう恐れもあるのであまりお薦めは出来ません。
高気密高断熱住宅でおすすめハウスメーカー
高気密高断熱住宅を検討されている方におすすめのハウスメーカーを幾つかご紹介しておきます。
一条工務店
一条工務店は業界でもトップクラスの住宅性能を誇るハウスメーカーです。熱交換率90%の換気システム「ロスガード90」が標準搭載されています。
他にも、生活スペースのほぼ100%をカバーする全館床暖房や大容量太陽光発電、Low-Eトリプル樹脂サッシなどが採用されており高気密高断熱の家×充実設備により省エネで快適性に優れる家づくりを行います。
断熱等級7に対応可能な断熱オプション「断熱王」もあり、現行の断熱性能の最高等級仕様にする事も可能です。
紹介したハウスメーカーのカタログ
※地域やタイミングにより候補に出ないHMもあります。
タマホーム
低価格でありながら高品質なコスパの良い家づくりが人気のハウスメーカーです。全熱交換型全館セントラル24時間換気システムを標準搭載しています。(商品による)
2023年4月に発売された「笑顔の家」は標準仕様で最高等級である断熱等級7に対応しています。太陽光発電も搭載されており年間の電気代を大幅に抑えてくれます。
価格は抑えつつも高気密高断熱住宅の家を目指したい方にとてもおすすめです。
アキュラホーム
「カンナ社長」の愛称で知られる元大工の社長の想いが根付いており職人品質にもこだわり施工力でも満足度の高いハウスメーカーです。
換気システムは第一種、第三種どちらも用意されているので選択可能です。1mm単位から設計可能な完全自由設計で理想通りの住まいを叶えてくれます。
2023年7月から販売開始された、エアコン一台でも一年中快適な、断熱等級7対応の「剛木造 超断熱の家 -プレミアム-」という高気密高断熱住宅を取り扱っています。
スウェーデンハウス
可愛くておしゃれな北欧デザインの住宅を手掛けるハウスメーカーです。標準仕様で熱交換率85%の24時間熱交換型換気システムを採用しています。
樹脂サッシよりも断熱性能に優れる木製サッシ+3層ガラス窓が標準搭載されています。木製サッシを標準仕様としているハウスメーカーは希少です。
高い住宅性能はそのままに価格を抑えた規格住宅も人気商品となっています。
ダイワハウス
鉄骨造・木造どちらも取り扱っており、一邸毎にプロの建築士やコーディネーター、施工技術者など各分野の専門スタッフがチームを組んで家づくりをサポートしてくれます。
設計自由度も家づくりへの満足度も高いハウスメーカーで、春~秋は自然給気、冬は機械給気になるランニングコストを抑えたオリジナル換気システム「風なびES」か、熱交換換気システム「風なびRX Ⅱ」が選ぶ事が出来ます。
また木造の場合であれば、現行の最高ランクである断熱等級7に対応した断熱仕様のオプションも選択可能で高気密高断熱住宅を実現します。
紹介したハウスメーカーのカタログ
※地域やタイミングにより候補に出ないHMもあります。
まとめ
最後に、本ページの題材である「高気密高断熱住宅でも24時間換気システムで寒い?」について纏めますが、高気密高断熱住宅であっても24時間換気システムが原因で寒いと感じる事はあります。
それは、外気温のままの空気を室内に取り込んでいるからです。
ただし、第一種換気に付ける事が出来る全熱交換機を付けた換気システムであれば外気を室温に近づけてから給気するので寒いと感じる事は減らせます。
全熱交換器が取り付けられない第三種換気や、全熱交換器の付いていない第一種換気だと熱交換がされないので換気によって寒いと感じる事があります。
その為、一番の対策は24時間換気システムを全熱交換付きの第一種換気にする事です。
第三種に比べると導入コストが高くなるのがデメリットですが、最近は高気密高断熱住宅の需要増と比例して全熱交換付きの第一種換気も増え、コストも以前より安くはなってきています。
様々な高気密高断熱住宅を見比べて、自分達家族にベストな家づくりを行うハウスメーカーがどこかのか時間をかけて比較・検討してみましょう。
素敵なマイホームづくりを応援しています。
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