寒冷地で人気のハウスメーカー【雪国の家づくり】
冬の寒さが厳しい寒冷地でも暖かく快適に過ごせる家づくりのポイントや寒冷地で人気のハウスメーカーの紹介などを行っていきます。
寒冷地には様々な定義がありますが、ここでは積雪期間が年間で90日以上あり、年平均気温が10℃以下の北海道・東北地方・北信越地方などの雪国を主に寒冷地とします。
寒冷地の家づくりで欠かせない性能
寒冷地の家づくりで、特に欠かす事の出来ない住宅性能を解説します。
断熱性能
断熱性能は寒冷地でも暖かく過ごす為には必須となる住宅性能です。
断熱性能がどの位あるのかを判断する時に使うのがUA値(外皮平均熱貫流率)です。
UA値とは屋根や壁、窓などの外気に触れている場所(外皮)を介して熱がどれ位外に逃げているのかを表す値です。
熱の逃げやすさを表す値なので小さい値の方が断熱性能が高い事を示します。
断熱性能が高ければ冬は暖められた室内の空気を外に逃がしづらくなり、夏は暑い外気温が室内に入りづらくなるので年間を通じて快適な住環境を保ちやすくなります。
UA値は「UA値(w/㎡・K)=家全体から逃げる熱量の合計(w/k)÷外皮面積(㎡)」で求められます。
ちなみに住宅の断熱性を示す「断熱等級」はUA値で決まります。
◦各断熱等級の基準となるUA値
断熱等級 | 地域区分 | ||||||||
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | ||
北海道 | 青森・岩手など | 東北・長野など | 関東~九州北部 | 宮崎・鹿児島 | 沖縄 | ||||
断熱等級4 「H28 省エネ基準」 | UA値 | 0.46 | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 | 0.87 | – |
断熱等級5 「ZEH水準」 | UA値 | 0.4 | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.6 | 0.6 | 0.6 | – |
断熱等級6 「HEAT20 G2」相当 | UA値 | 0.28 | 0.28 | 0.28 | 0.34 | 0.46 | 0.46 | 0.46 | – |
断熱等級7 「HEAT20 G3」相当 | UA値 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.23 | 0.26 | 0.26 | 0.26 | – |
地域区分の1~4地域が寒冷地にあたります。
ZEH以上の断熱性能を求めるとなると1・2地域ではUA値0.4以下、3地域ではUA値0.5以下、4地域ではUA値0.6以下である事が求められます。
気密性能
気密性能とは住宅にどれ位のすき間が空いているかを表した性能でC値を使って確認します。
家がすき間だらけだと外気の出入りが増えてしまい外気温の影響を受けやすくなってしまうので気密性能も寒冷地ではとても重要な住宅性能です。
気密性能が低ければ断熱性能だけ高くてもあまり意味がありません。逆も然りです。気密性能と断熱性能は両方高くて始めて意味を持ちますので、この2つの性能はセットで考えるようにしましょう。
また気密性能は効率的に換気を行う為にも必要な性能です。
穴の空いたストローでは上手に吸えないのと同じで、気密性の低い家では計画的な換気が行えません。
ちなみにC値は「C値(c㎡/㎡)=家全体のすき間の合計(c㎡)÷延床面積(㎡)」で求められます。
換気性
寒冷地では窓を閉め切りがちである事や、高気密住宅はスキ間がないので自然換気も期待出来ない事から換気性が重要になります。
戸建てに採用される24時間換気システムの種類は、排気も給気も機械換気の「第一種換気」と、給気は自然換気で排気は機械換気の「第三種換気」があります。
第一種と第三種の大きな違いは「全熱交換機」が取り付けられるかどうかです。
第一種は取り付ける事が可能なので、排気の熱を利用して外から取り込む空気を室温に近づけてから給気します。その為、換気による熱ロスが少なくなります。
第三種は外の空気を直接取り込むので、寒冷地などは換気による熱ロスが大きく冷暖房費が高くなったり、給気口付近が寒く感じたりする事もあります。
その為、快適性を考えると全熱交換付きの第一種が良いですが、導入コストや設置後のメンテナンス費用やフィルターの掃除・交換などの手間なども考えると第三種の方に軍配が上がります。
どちらも一長一短なので、お金や手間がかかっても快適性を求める方は第一種。出来るだけ費用を抑えたい方は第三種というように施主さんの希望する条件に合わせて決めましょう。
耐震性
地震に耐える事は勿論、寒冷地では降雪量があるため雪の重量に耐えられる強固な構造躯体が必要になります。
積雪寒冷期に大規模地震が起きないとも限らないので耐震等級は最高等級である3は確保しておきたいところです。
寒冷地の家づくりのポイント
寒冷地の家づくりで意識すべきポイントをいくつかご紹介していきます。
屋根の形状
積雪量の多い寒冷地では、デザイン性だけでなく積雪への対策も考えて屋根の形状を決める必要があります。
雪国向きの屋根の種類は、屋根に勾配をつけて自然に落雪を促す「落雪式」、雪を地面に落とさず自然に溶けるのを待つ「無落雪式(耐雪式)」、屋根にヒーター等を設置して雪を融かす「融雪式」があります。
◦主な特徴
・3階建て住宅で採用される事が多い
・十分な敷地が無いと近隣住宅に迷惑がかかる恐れがある
・落雪せずに雪が降り積もると雪下ろしが必要
・雪の重さに耐えられる構造躯体が必要
・落雪事故を防止できる
・除雪や雪下ろしの負担が軽減される
・落雪事故を防止できる
・除雪や雪下ろしの負担が軽減される
・ランニングコストが高い
以前に比べると、敷地がコンパクトになっている事や安全性やメンテナンス性、ランニングコストの面なども考え「無落雪式(耐雪式)」の屋根が主流となってきています。
「落雪式」の屋根は3種類
近年、主流となってきている落雪式屋根についてもう少し深掘りします。落雪式屋根には「スノーダクト方式」「フラットルーフ方式」「勾配屋根方式」の3種類があります。
◦スノーダクト方式
屋根の中央に向かって勾配を付けて、中央には溶けた雪を排出するダクトが付けられています。ダクトの定期的なお掃除、メンテナンスが必要です。
◦フラットルーフ方式
屋根がほとんど平なので雪が落ちてこない形状となっています。僅かに傾いた側へ溶けた雪が流れていきます。氷柱や雪庇が出来やすいデメリットがあります。
◦勾配屋根方式
三角屋根などに雪止めの役割を果たす突起を付けた方式です。勾配のある屋根にしたい方に向いており、3種類の中で1番安く採用出来ます。ただし、雪止めの許容量を超えた場合落雪する恐れがあります。
雪に強い屋根材を使用
積雪量の多い寒冷地では金属屋根(主にガルバリウム鋼板)が最も多く使われています。
金属で出来ているので吸水率がほぼゼロで凍害が起こりにくく、軽量な為耐震性でも有利に働きます。
主流になってきている無落雪屋根の屋根材も板金なので、積雪量の多いエリアの新築戸建ての約7割位は金属屋根を採用しています。
ただ、日本海に面した北陸地方では瓦屋根もわりと見かけます。
釉薬を使い表面をコーティングした釉薬瓦は吸水率も低く"塩害に強い"とされています。
海沿いの地域では塩害のリスクも考えて釉薬瓦を採用するケースも多くあります。
開口部の断熱性能
家の断熱性能を気にかける上で一番チェックしておきたいのが開口部(外部に開放された部分の事。窓や玄関、勝手口等)の断熱性能がどのようになっているのかです。
上図は家の外皮を介して熱が出入りする経路の割合を示しているのですが、夏は73%冬は58%の熱が開口部から流出入しています。
つまり開口部の断熱性能を高める事が家全体の断熱性能を高める事に直結します。
開口部の中でも最初に確認したいのが、割合の多い「窓」の断熱仕様です。
窓の断熱仕様を確認する時は次の3点をチェックしておきましょう。
・窓ガラスの種類+中間層の気体の種類
・窓サッシの種類
・スペーサーの種類
◦窓ガラスの種類+中間層の気体の種類
窓ガラスは主に4種類あり「単板ガラス」→「複層ガラス」→「Low-E複層ガラス」→「Low-Eトリプルガラス」の順に断熱性能が良くなります。
中間層の気体は主に4種類あり「乾燥空気」→「アルゴンガス」→「クリプトンガス」→「真空」の順に断熱性能が良くなります。
寒冷地であれば「Low-E複層ガラス」+「アルゴンガス」以上の断熱仕様が望ましいです。
◦窓サッシの種類
窓サッシは主に4種類あり「アルミサッシ」→「アルミ樹脂複合サッシ」→「オール樹脂サッシ」→「木製サッシ」の順に断熱性能が良くなります。
寒冷地であれば「オール樹脂サッシ」以上の断熱仕様が望ましいです。
◦スペーサーの種類
スペーサーは主に2種類あり「アルミスペーサー」→「樹脂スペーサー」の順に断熱性能が良くなります。
寒冷地であれば「樹脂スペーサー」が望ましいです。
玄関ドアや勝手口の断熱性能にも注目
窓以外の開口部である玄関ドアや勝手口の断熱性能にも注目しておきましょう。
玄関ドアは豪華な見た目の親子ドアやおしゃれな見た目の片袖FIXドア等でなくシンプルな片開きドアが費用も安めでU値(熱の通りやすさを表す数値)も小さく断熱性能を上げやすいです。
勝手口に関しては、断熱性能だけを考えるのであれば付けないのが一番良いですが、設置するのであれば出来るだけU値の小さい商品を選びましょう。
玄関フード・風除室の有無
玄関フード(風除室)とは玄関周りを囲うガラス張りの部屋の事です。寒冷地で設置される事が多いこの玄関フードを設置するかしないかでも快適性が大きく変わります。
雪の吹込みや冷たい風を防いでくれるので室温の低下も防いでくれます。玄関の凍結や積雪で玄関ドアが開かなくなる事も防いでくれたり、悪天候時でも出入りしやすかったり簡易的な物置としても使う事が出来ます。
ただ、設置するとなるとその分費用がかかります。また、冬場は良いですが夏は熱がこもり蒸し暑く感じられるデメリットがあります。
他にも、デザイン性が損なわれるという理由や高気密・高断熱住宅であれば玄関フードまで付ける必要性を感じないという理由で付けない施主さんもいますので自分が優先させる条件に合わせて決めましょう。
寒冷地で人気のハウスメーカー
寒冷地に家を建てる場合、どのようなハウスメーカーを選べば良いのか説明すると共に、寒冷地で人気の高いハウスメーカー7社をご紹介致します。
寒冷地での実績の多いハウスメーカー
寒冷地での施工実績の多いハウスメーカーであれば高気密・高断熱住宅を得意としているので多くのノウハウを持っています。実績の差はそのまま設計力や提案力の差に繋がるので、寒冷地での施工実績が多いハウスメーカーを選びましょう。
UA値、C値を確認する
ハウスメーカーが提供する住宅の断熱性能(UA値)と気密性能(C値)を確認しておきましょう。
ただ、住宅商品によってもUA値は異なるので狙っている商品のUA値を確認しておきましょう。またC値は実測値なので1棟1棟異なります。過去に施工した住宅の平均C値などを伺っておきましょう。
標準仕様での換気システムもチェックしておくと良いです。
複数の会社を候補にあげる。見積もりも
家づくり検討し始めの段階では、出来るだけ多くのハウスメーカーを候補にあげて比較・検討を行いましょう。そして見積もりも1社だけではなく2社、3社位からは貰いましょう。
注文住宅は定価というのがないので、相見積もりを行う事で始めて適正価格が見えてきます。
寒冷地で人気のハウスメーカー7社!
以下のハウスメーカーは寒冷地での実績も豊富でUA値、C値も優れた高気密・高断熱住宅を得意としているハウスメーカーで、寒冷地で建てる方に人気のハウスメーカーです。
一条工務店
業界でもトップクラスの住宅性能を持つ一条工務店は寒冷地でも人気のハウスメーカーです。「外内ダブル断熱構法」で魔法瓶のような高い断熱性と省エネ性を実現しています。
人気商品「i-smart」は全地域でUA値0.25[W/㎡・k]を実現、気密性能C値の平均は0.59[c㎡/㎡]で高気密高断熱に加えて、熱交換換気システム「ロスガード90」や生活スペースのほぼ100%をカバーする床暖房が標準で搭載されています。
2023年には現行の最高ランクである断熱等級7に対応可能な断熱オプション「断熱王」も発売が開始され、寒冷地でも温かく快適に暮らせる住宅を手掛けてくれます。
紹介したハウスメーカーの最新カタログ
※地域やタイミングにより候補に出ないHMもあります。
ダイワハウス
xevoΣ(ジーヴォシグマ)やxevoGranWood(ジーヴォグランウッド)など鉄骨造も木造も手掛ける大手ハウスメーカーです。鉄骨・木造共に強固な構造躯体で耐震性に優れます。
断熱性能も高く、木造の住宅商品では5段階の断熱仕様が用意されています。(「スタンダードW断熱」「ハイクラスW断熱」「エクストラW断熱」「プレミアムW断熱」「ウルトラW断熱」)
2023年6月にリリースされた、最新の断熱仕様「ウルトラW断熱」は断熱等級7対応で高断熱・高気密を実現しており雪国の家づくりに必要な性能を全て満たしています。
土屋ホーム
北海道を拠点に創業50年を超える高気密高断熱住宅を得意とするハウスメーカーです。軸組構造の良い所と壁構造の良い所を組み合わせた独自の構造体で高い耐震性を確保、自社大工による施工精度も好評です。
断熱等級7を満たした断熱性能UA値0.19[W/㎡・k]、気密性能C値0.38[c㎡/㎡]に加え、全館暖房換気システムが標準仕様の省エネ住宅「CARDINAL HOUSE BES-T019」を取り扱っています。
同商品は2022年には省エネ大賞・最高賞を受賞しており、上質な住み心地×揺るぎない安心×自社大工による安心の施工制度を満たした家づくりを行ってくれます。
アエラホーム
省エネルギー性が優れた住宅を表彰する「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー」を2013年から10年連続受賞するなど高気密・高断熱住宅を得意としています。
キューワンボードという表面に遮熱性能に優れた赤外線高反射タイプのアルミ箔が張り付けられた高性能硬質ウレタンフォーム断熱材を使用し、アルミで包んだ家が同社の特徴です。
両面に張られたアルミ箔の遮熱性能で、夏は暑い日射を冬は冷気を反射し快適性を保ちます。気密性能に関しても気密テープと発泡ウレタンで丁寧な気密施工を行い平均C値0.35[c㎡/㎡]を実現しています。
紹介したハウスメーカーの最新カタログ
※地域やタイミングにより候補に出ないHMもあります。
スウェーデンハウス
高性能でデザイン性も可愛くおしゃれな北欧住宅を手掛けるハウスメーカーです。木材も樹齢80年前後の木目が密に詰まった天然のスウェーデン材を使用しています。
一般的な2×4材の1.6倍の断面積を持つ構造材を使用し高い耐震性を確保すると共に、標準使用でデザイン性にも優れる木製サッシの3層ガラス窓を採用しています。
UA値は全棟平均が0.36、オプションの強化断熱仕様の場合は0.28[W/㎡・k]で気密性能C値は0.64[c㎡/㎡]に熱交換率85%の第一種換気システムで快適な住環境を実現してくれます。
北洲ハウジング
岩手・宮城・福島・栃木・埼玉などで2×6工法の木造住宅を手掛けるハウスメーカーです。断熱・気密・遮熱・蓄熱・調湿・空気室・換気・安全の8つの性能にこだわり家づくりを行っています。
標準仕様で断熱性能は断熱等級6を超える(4地域の場合)UA値0.31[W/㎡・k]を満たし、断熱オプションで等級7相当の0.23[W/㎡・k]にも対応可能です。
窓まわりやコンセント周りの気密施工も入念に行いC値は平均値で0.49[c㎡/㎡]を実現しています。また、軒の出方などで日射エネルギーをコントロールするパッシブ設計で快適性に優れた住宅を提供してくれます。
ロゴスホーム
北海道札幌市に拠点を構え、北海道や宮城・福島・岩手・青森などで高性能住宅を適正価格でお届けするハウスメーカーです。北海道住宅着工数No.1に輝いています。(※2021年北海道住宅データバンク調べ)
施行を担当するのは下請けの工務店などではなく直接契約した職人で直接施工により品質を高く保ち、誰に対しても値引き等が一切ない適正価格での提供で信頼を得ています。
性能面でも、耐震性・断熱性・気密性・遮音性にも優れる2×6工法で長期優良住宅にも対応が可能です。標準仕様でZEHを満たすセミオーダー住宅なども取り扱っておりコスパよく寒冷地向きの家づくりが行えます。
紹介したハウスメーカーの最新カタログ
※地域やタイミングにより候補に出ないHMもあります。
まとめ
寒冷地の家づくりで特に重要視したい住宅性能や家づくりのポイント、寒冷地で人気のハウスメーカーの紹介などを行ってきました。
一年を通じて、快適で住みやすいマイホームを実現するには、建てる地域に合わせた家づくりが必要になってきます。寒冷地であれば雪国での実績が豊富で高気密・高断熱を得意としているハウスメーカーを候補にあげて比較・検討をおこないましょう。
素敵なマイホームづくりを応援しています。
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